※この記事は公開後、2026年9月に最新の公的情報を確認し、大幅に加筆・修正しました。
「出張旅費規程は作った方がいい?」
「日当や宿泊費はいくらに設定すればいい?」
「規程を作れば出張日当は非課税になる?」
会社で出張が増えてくると、交通費・ホテル代・日当などの扱いをその都度判断するのは大変でござる。
そこで役立つのが出張旅費規程です。
出張旅費規程を整備しておけば、
– どこから出張扱いにするか
– 新幹線や飛行機を使える条件
– ホテル代はいくらまでか
– 日当をいくら支給するか
– タクシー代を認める条件
– 領収書が必要か
– 精算期限はいつまでか
といったルールを社内で統一できます。
ただし、ひとつ注意したいのが、「出張旅費規程を作れば、記載した日当がすべて非課税になる」わけではないという点です。
国税庁では、転勤や出張などの旅費のうち、その旅行について通常必要と認められるものを非課税としています。規程の有無だけで税務上の扱いが決まるわけではありません。
この記事では、出張旅費規程の基本から必要項目、作り方、税務上の注意点、簡易サンプルまで解説するでござる。
目次でござる
出張旅費規程とは?
出張旅費規程とは、社員や役員が業務で出張するときの費用負担・支給・精算方法などを定めた社内ルールです。
たとえば、
東京から大阪へ出張する場合、新幹線は指定席まで認めるのか?
ホテル料金が会社の上限を超えたらどうするのか?
日帰り出張でも日当を支給するのか?
といった判断を、担当者や出張者ごとに変えないために使います。
出張旅費規程で扱う主な費用
一般的には、
– 交通費
– 宿泊費
– 出張日当
– タクシー代
– 駐車料金
– 高速道路料金
– 海外出張に関する費用
– その他業務上必要な経費
などを規定します。
特に出張回数が増えると、「前回は認められたのに今回はダメなの?」という問題も起きやすくなります。
あらかじめ基準を明文化しておけば、出張者と経理担当者の双方が判断しやすくなるでござる。
出張旅費規程を作るメリット
経費精算のルールを統一できる
一番分かりやすいメリットです。
規程がないと、
Aさんは新幹線指定席
Bさんは自由席
Cさんはグリーン車
など、判断基準が曖昧になりやすくなります。
出張旅費規程で、
新幹線は原則普通車指定席
グリーン車は役員または事前承認時のみ
のように決めておけば、社員ごとのばらつきを抑えられます。
経理担当者の負担を減らせる
出張のたびに、
「これは経費になりますか?」
「ホテル代はいくらまでですか?」
「タクシーを使ってもいいですか?」
と確認していては、経理担当者の作業も増えます。
あらかじめルールを明文化すれば、承認や精算をある程度定型化できます。
宿泊費高騰への対応ルールを決められる
最近は、都市部や繁忙期にホテル料金が大きく上がることがあります。
そこで、
通常は1泊12,000円まで
繁忙期などやむを得ない場合は事前承認で上限超過可
といった例外ルールを用意しておくと実務上使いやすくなります。
単純に「1万円を超えたら自己負担」とすると、出張者が現実的にホテルを確保できないケースもあるためでござる。
税務上の取り扱いを整理しやすい
出張旅費規程を作ることで、
– 誰に
– どんな出張で
– いくら支給するか
– どの費用を実費精算するか
を整理できます。
ただし、規程を作っただけで税務上の非課税が保証されるわけではありません。
国税庁は、出張旅費・宿泊費・日当などのうち、その旅行について通常必要と認められる部分を基準に判断しています。
出張旅費規程に記載したい項目
実際に規程を作る場合、最低限整理しておきたい内容があります。
1.出張の定義
1. 宿泊費の相場と設定基準
まず、
どこからが「出張」なのか
を決めます。
たとえば、
通常の勤務地から片道50km以上
など距離で定める方法もあれば、
通常の勤務地を離れて会社が業務命令した場所へ赴く場合
と定義する方法もあります。
会社の業務内容によって適切な基準は異なります。
2.適用対象者
– 正社員
– 契約社員
– パート・アルバイト
– 役員
など、誰に規程を適用するのかを明確にします。
役職によって日当や交通機関の座席区分を変える場合も、ここで整理しておくと分かりやすいです。
3.交通費
交通費では、
– 電車
– 新幹線
– 飛行機
– バス
– タクシー
– レンタカー
– 自家用車
などについて定めます。
たとえば、
新幹線は普通車指定席を原則とする
航空機利用は片道○km以上または所要時間等を考慮して会社が承認する
などです。
4.宿泊費
宿泊費については、
実費精算
または
定額支給
のどちらにするかを決めます。
実費精算なら、
1泊15,000円を上限として実費を支給
のような設定もできます。
さらに、
大規模イベント・繁忙期などで上限内のホテルを確保できない場合は、事前承認により上限を超えることができる
という例外規定も実務上は重要でござる。
5.出張日当
日当を設定する場合は、
– 国内日帰り
– 国内宿泊
– 海外
– 役職別
などに分ける方法があります。
たとえば、
国内出張:1日2,500円
のような定額支給です。
ただし金額を設定するときは、単に「節税になるから高くする」のではなく、出張に通常必要な範囲や社内のバランスを考える必要があります。
6.日帰り出張の扱い
意外とトラブルになりやすい部分です。
たとえば、
日帰りでも日当を全額支給する
4時間未満なら半額
一定距離未満は日当なし
などを明確にします。
7.タクシーの利用条件
「タクシー代はすべて経費」とすると費用が膨らむ可能性があります。
そのため、
– 公共交通機関がない
– 深夜・早朝で公共交通機関を利用できない
– 大量の荷物がある
– 複数人利用で経済的
– 緊急性がある
など、条件を決めておく方法があります。
8.キャンセル料
飛行機やホテルを予約したあと、業務都合で出張が中止になる場合もあります。
このとき、
会社都合なら会社負担
本人都合の場合は個別判断
などの基準がないとトラブルになりやすいでござる。
9.領収書・証憑の取り扱い
– 紙の領収書
– 電子領収書
– ICカード利用履歴
– 航空券明細
– ホテル予約サイトの領収書
など、何を証憑として認めるのかも整理します。
法人カードを利用する場合は、その扱いも決めておきましょう。
10.精算期限
たとえば、
出張終了後7営業日以内に精算する
など期限を決めます。
期限がないと数カ月前の経費が突然提出されるケースもあるため、経理処理の効率化にもつながります。
出張旅費規程の日当はいくらに設定する?
ここは会社ごとに決める必要があります。
日当について全国共通で、
「必ず○円にしなければならない」
という金額が決まっているわけではありません。
そのため、
– 他社水準
– 役職
– 出張内容
– 出張頻度
– 通常発生する雑費
– 社内給与とのバランス
などを考慮します。
そして税務上重要なのは、通常必要と認められる範囲かどうかです。
国税庁も、出張旅費・日当のうち通常必要と認められる部分を非課税としており、その範囲を超える部分は給与として扱われる場合があります。
そのため、
「1日10万円と規程に書けば10万円全部非課税」
という考え方はできません。
出張旅費規程があれば日当は非課税になる?
ここは特に誤解されやすい部分です。
結論からいうと、
出張旅費規程が存在するだけで、自動的に日当が非課税になるわけではありません。
国税庁は、役員や従業員へ支給する手当は原則として給与所得としつつ、例外として、
転勤や出張などのための旅費のうち、通常必要と認められるもの
を非課税としています。
つまり税務上は、
– 出張の内容
– 支給対象者
– 支給額
– 他の社員とのバランス
– 社会通念上の妥当性
なども含めて考える必要があります。
規程に書けば高額な日当でもOKではない
たとえば、
国内日帰り出張の日当を50,000円
と規程に書いたとしても、
規程があるから全額非課税
とは限りません。
通常必要と認められる範囲を超える部分は、給与として課税される可能性があります。国税庁も、通常必要な範囲を超える出張旅費については所得税上給与となる旨を示しています。
出張旅費規程は税務署へ提出する必要がある?
一般的な出張旅費規程について、
「作成したら税務署へ出張旅費規程を提出する」
という税務署への届出制度があるわけではありません。
旧記事にこのような記述がある場合は削除してよいです。
ただし、労務上は別の話があります。
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。変更時も同様です。
出張旅費規程を就業規則の一部・付属規程として位置づける場合など、具体的な扱いについては社会保険労務士などへ確認すると確実でござる。
インボイス制度では出張旅費をどう扱う?
2026年現在、インボイス制度との関係も確認しておきたいところです。
国税庁では、国内出張のため従業員等へ支給する、
– 出張旅費
– 宿泊費
– 日当
のうち、その旅行について通常必要と認められる部分については課税仕入れとなり、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けられる扱いがあります。
一方、海外出張の旅費・宿泊費・日当などは原則として課税仕入れにはなりません。
ただし、具体的な経理処理は取引内容によって異なるため、会社の税理士や経理担当者へ確認するのが確実です。
出張旅費規程の作り方
ここからは、実際に規程を作る流れを整理します。
1.現在の出張実績を確認する
まず、
– 年間何回出張しているか
– よく行く地域
– 平均ホテル料金
– 新幹線・飛行機の利用頻度
– タクシー利用
– 海外出張の有無
を確認します。
実態を見ずに規程を作ると、現場で使えない内容になりやすいです。
2.出張の定義を決める
法人カードを活用することで、出張費の管理がスムーズになり、経理業務の負担を大幅に軽減 できる。
次に、
どのような移動を出張と扱うか
を決めます。
距離・勤務地・業務命令などを基準に、自社の仕事内容に合う定義にします。
3.交通費・宿泊費・日当を決める
– 交通費は実費
– 宿泊費は上限付き実費
– 日当は定額
など、支給方法を決めます。
特にホテル料金は変動しやすいので、例外承認ルールまでセットで作ると運用しやすいです。
4.役職による違いを決める
役員・管理職・一般社員で、
– 日当
– 宿泊費上限
– 座席区分
を変えるなら、その基準を明記します。
ただし、不自然に大きな差を設定すると税務上の妥当性について説明が必要になる可能性があります。
5.例外時の承認方法を決める
たとえば、
東京のホテルがすべて上限を超えている
といったケースがあります。
その場合、
上司または経理責任者の事前承認があれば上限を超えて宿泊可
などのルールを作ります。
6.社員へ周知する
規程を作っただけでは意味がありません。
– 社内イントラ
– 経費精算システム
– 社員向けマニュアル
などで確認できるようにします。
7.定期的に見直す
旅費規程は一度作って終わりではありません。
特に、
– ホテル料金
– 航空運賃
– 物価
– 海外為替
– 社内の出張実態
は変わります。
少なくとも数年に一度、実態と合っているか確認したいところでござる。
出張旅費規程の簡易サンプル
以下はあくまで構成イメージをつかむための簡易例です。
実際に導入する場合は、自社の業務内容や就業規則、税務・労務上の条件に合わせて調整してください。
第1条(目的)
本規程は、役員および従業員が会社の命令により出張する場合の旅費について定めることを目的とする。
第2条(出張の定義)
出張とは、会社の命令により通常の勤務地を離れて業務を行うことをいう。
第3条(交通費)
出張に必要な交通費は、合理的かつ経済的な通常の経路による実費を支給する。
第4条(宿泊費)
宿泊を必要とする出張については、会社が定める上限額の範囲内で実費を支給する。やむを得ない事情がある場合は、事前承認により上限を超えることができる。
第5条(日当)
出張者には会社が別に定める基準に基づき出張日当を支給する。
第6条(タクシー等)
公共交通機関の利用が困難または業務上必要と会社が認めた場合は、タクシー等の利用を認める。
第7条(精算)
出張者は出張終了後、会社が定める期限までに必要な証憑を添えて旅費精算を行う。
第8条(例外)
本規程に定めのない事項または特別な事情がある場合は、会社が個別に判断する。
これをベースに、
– 日帰り出張
– 国内・海外
– 役職別
– キャンセル料
– 法人カード
– 自家用車
– 海外旅行保険
など、自社に必要な項目を追加していきます。
出張旅費規程を作るときの注意点
節税だけを目的にしない
出張旅費規程は、
「日当を非課税で受け取るための制度」
ではありません。
本来の目的は、出張に必要な費用の取り扱いを明確にし、会社と出張者の双方がスムーズに精算できるようにすることです。
税務上の非課税は、通常必要な範囲であることが前提です。
実態とかけ離れた金額を設定しない
ホテル代が平均15,000円程度なのに、
宿泊費上限5,000円
では現実的ではありません。
反対に、実際の出張でほとんど必要のない高額な日当を設定するのも問題になり得ます。
実際の出張データをもとに設定することが重要です。
規程と実際の運用を一致させる
規程には、
指定席のみ
と書いてあるのに毎回グリーン車を認めているなど、規程と実際の運用が違う状態は避けたいところ。
ルールを作ったら、実際の経費精算もそれに合わせます。
出張旅費規程に関するよくある質問
出張旅費規程は必ず作らなければいけませんか?
すべての会社に「出張旅費規程」という名前の独立した規程を作成する義務がある、という制度ではありません。
ただし出張が頻繁にある会社では、費用精算のルールを明確にするために作成しておくメリットがあります。
また、就業規則に関係する場合は、常時10人以上の労働者を使用する事業場に関する届出義務などにも注意が必要です。
出張旅費規程は税務署へ提出しますか?
一般的な出張旅費規程自体を、作成のたびに税務署へ提出する制度ではありません。
ただし労務・税務の具体的な扱いは会社の状況によって異なるため、必要に応じて税理士・社会保険労務士へ確認してください。
日当はいくらに設定すればいい?
法律で一律の金額は決まっていません。
自社の出張実態や他社水準、役職などを考慮し、通常必要と考えられる範囲で設定します。
詳しい相場については、「出張手当・日当の相場」記事へ内部リンクしてください。
出張旅費規程があれば日当は非課税?
規程があるだけで決まるわけではありません。
国税庁では、出張旅費等のうちその旅行について通常必要と認められるものを非課税としています。
実費精算でも出張旅費規程は必要?
実費精算でも、
– 宿泊費上限
– 利用できる交通手段
– タクシー利用
– 精算期限
– 証憑
などを決めるため、規程を整備する意味はあります。
まとめ|出張旅費規程は実態に合ったルールを作ろう
出張旅費規程は、単なる「日当を決める規程」ではありません。
重要なのは、
出張の定義
交通費
宿泊費
日当
タクシーなどの例外費用
領収書・精算期限
上限超過時の承認方法
まで含めて、社内のルールを明確にすることです。
また、
出張旅費規程を作れば日当がすべて非課税になる
という考え方には注意してください。
国税庁の基準は、あくまでその旅行について通常必要と認められる範囲です。
さらに国内の出張旅費・宿泊費・日当については、通常必要と認められる部分であれば、インボイス制度上も一定の条件で帳簿のみの保存による仕入税額控除が認められています。
まず自社の出張実績を確認し、
社員が迷わず使えて、経理も迷わず処理できる規程
を作ることが大切でござる。


































